2022年7月19日
余談ですが、CO2削減可能な化石燃料発電を追記しました。
EVと同等の環境負荷レベルと言われる「高効率内燃機関」とカーボンニュートラルな燃料と言われる合成燃料e-fuel、北米を中心に開発プロジェクトが急増しているバイオ燃料(バイオマス燃料)に関連する情報をまとめます。日産やポルシェが積極的に取り組んでいると言われています。情報が入り次第、更新します。
【高効率内燃機関】日産
日産が開発したのは「STARC(Strong Tumble and Appropriately stretched Robust ignition Channel)」と呼ぶ燃焼コンセプトです。シリンダー内に入った空気のタンブル(縦渦)を強化することに加え、プラグでの点火エネルギーを高めることで、薄い混合気を高い圧縮比で燃焼させることによって熱効率を向上させるという技術です。
この技術は、従来エンジンの「エンジンの中の混合気の流動状態も絶えず変化する」という事象を、エンジンを発電専用に使う「e-POWER」と組み合わせることで、効率の高い条件に限定して運転することにより可能になった。
日産によれば、エンジン効率を50%まで高めると、現在の日本の発電状況を考えればEVとe-POWER搭載車の環境負荷はLCA(Life Cycle Assesment:燃料の採掘から廃車までを考慮)を考慮するとほぼ同等になるという。
【e-fuel】合成燃料e-fuelとは
e-Fuelは、火力発電所などで排出されるCO2(二酸化炭素)と、再生可能エネルギーを使って生産したH2(水素)を合成して製造する燃料。複数の炭化水素化合物の集合体で、 「人工的な原油」とも言われます。合成燃料は、原油にくらべて硫黄分や重金属分が少ないという特徴があり、燃焼時にもクリーンな燃料となります。カーボンニュートラルな燃料として利用できる。
CO2
原料となるCO2は、発電所や工場などから排出されたCO2を利用します。将来的には、大気中のCO2を直接分離・回収する「DAC技術」を使って、直接回収されたCO2を再利用することが想定されています。
H2
水素は、製造過程でCO2が排出されることがない再生可能エネルギーなどでつくった電力エネルギーを使って、水から水素をつくる「水電解」をおこなうことで調達する方法が基本
合成燃料のメリット
エネルギー密度が高い
少ないエネルギー資源量でも多くのエネルギーに変換することができる。動力源を電気・水素エネルギーに転換させることが困難なモビリティや製品(大型車やジェット機等)にも使用できる。(化石燃料由来の液体燃料を液体合成燃料に置き換えることができれば、エネルギー密度をキープしつつCO2の排出量をおさえることが可能。)
既存の燃料インフラを活用できる
従来の「内燃機関」(たとえばガソリンを使うためのエンジンなど)や、すでに存在している燃料インフラを活用できる。水素エネルギーなどのほかの燃料では新たな機器やインフラを整備しなければならないのに比較して、導入コストをおさえることができ、市場への導入がよりスムーズ。
エネルギーのレジリエンス(強靭性)やセキュリティの面でもメリットがある
積雪により停電が発生した地域への燃料配送、高速道路で立ち往生した自動車への給油もでき、災害対応機能を持った全国のサービスステーションなどでは既存のタンクを活用した備蓄も可能です。また、国内で工業的に大量生産できること、常温常圧で液体であるため長期備蓄が可能であることなど、さまざまな優位性があります。
合成燃料の課題
製造技術の確立
今の製造技術には製造効率の問題があり、効率の向上が課題となっています。革新的な製造技術としてさまざまな方法が研究開発の段階にあり、今後の実用化が期待されています。
コスト
現状では化石燃料よりも製造コストが高く、国内の水素製造コストや輸送コストを考えると、海外で製造するケースがもっともコストをおさえることができると見込まれています。
【e-fuel】ポルシェ
実験段階ではありますが南米チリでは シーメンスエネルギーと共同でカーボンニュートラルに近付ける次世代燃料 “e フューエル” の開発に着手して おり、2022 年からは世界で初めて e フューエル専用のプラントで合成燃料の生産を予定しています。この合成燃料は、気候変動に実質的な影響を与えることなく高回転の内燃機関を駆動できる可能性を秘めています。
ポルシェは2022年4月6日、合成燃料(e-Fuel)メーカーのチリHIF Global(HIFグローバル)に7500万ドル(約93億円、1ドル=124円換算)を投資すると発表した。
e-Fuelは、火力発電所などで排出されるCO2(二酸化炭素)と、再生可能エネルギーを使って生産したH2(水素)を合成して製造する燃料。カーボンニュートラルな燃料として利用でき、「人工的な原油」とも呼ばれる。今回の調達資金は、再生可能エネルギーが豊富なチリ、米国、オーストラリアで、産業用e-Fuel生産拠点の開発に充てられる。
Haru Oniプロジェクトは、ポルシェが主導して、ドイツSiemens Energyや米ExxonMobilなどと共同で実施しており、風力発電の電力を利用してe-Fuelを製造する。e-Fuelをエンジン車で使うと、走行中のCO2排出はカーボンニュートラルになる。
ポルシェは持続可能性戦略の1つとして、研究施設やレーストラックでe-Fuelの試験を進めている。チリ産のe-Fuelは、おもにモータースポーツで使用する計画だ。
【e-fuel】HIFグローバル
カーボンリサイクル燃料(e-fuel)を開発・製造するチリのHIFグローバルは4月28日、北米初となる同燃料の産業向け生産拠点の立地先として、米国テキサス州のマタゴルダ郡を選定したことを発表した。マタゴルダ郡はヒューストンの南西約82マイル(約131キロ)、メキシコ湾沿岸に位置している。
同社が生産を予定している代替燃料は、既存のエンジンやインフラに手を加えることなく、自動車に使用することが可能だ。大気中から回収した二酸化炭素(CO2)と再生可能な風力発電によるグリーン水素を組み合わせて製造される。
【e-fuel】三菱重工、米インフィニウムと覚書を締結
三菱重工業は、二酸化炭素(CO2)および再生可能エネルギーから生成可能なカーボンリサイクル燃料「エレクトロフューエル(Electrofuels)」の日本市場への展開について、同燃料への先進的な取り組みを実施している米国インフィニウム(本社:カリフォルニア州サクラメント)と共同で検討するため、覚書(MOU)を締結。
【バイオ燃料】
バイオ燃料としてガソリンに10%のバイオエタノールを混合した「E10」と呼ばれる燃料。「E」とはエタノール(Ethanol)の頭文字で、「10」は混合比率を示している。
エタノールは、サトウキビや穀物など、さまざまな植物から作られるアルコールベースの燃料である。エタノールは、通常の無鉛ガソリンとは異なり、CO2を吸収し、温室効果ガスの排出を一部相殺するという利点がある。
E10は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、中国などで広く普及。
E10の特性
E10に含まれる高濃度のバイオエタノールは、通常のガソリンよりも、ゴム部品、ガスケット、シール、金属、プラスチックなどを腐食し、エンジンにダメージを与えやすい。古いエンジンや燃料システムでは、カスや汚れが閉塞を起こす可能性がある。
https://www.mlit.go.jp/common/000205941.pdf日本の現状
日本では、ガソリンに混合できるエタノールは3%が上限。
E10ガソリン及びE10対応車を一般ユーザが利用できる環境を整備するための法令等の改正を実施。2012年(平成24年)4月1日よりE10が利用可能に(国土交通省の定めた保安基準を満たすことが認められた車両にのみ)
米国の例
米国ではバイオ燃料としてガソリンに10%のバイオエタノールを混合した「E10」と呼ばれる燃料が広く普及している。軽油では5%のバイオディーゼル燃料(BDF:Biodiesel Fuel)が混合された燃料が出回っている。
米国のバイオエタノールの生産量は、05年にブラジルを抜いて世界一となった。18年の生産量は、約159億ガロン(6010万kL)/年と2位ブラジルの約2倍に達する。日本のガソリン消費量は約135億ガロン(5100万kL)/年であるため、それを上回る。その主原料は、これも世界一の生産量を誇るトウモロコシ。
英国の例
2021年夏から、英国ではレギュラーガソリンがE10となり、ラベルが付けられている。SMMT(英国自動車製造販売者協会)は、英国で販売されているガソリン車の92.2%がE10に対応していると推定している。2011年以降、国内で販売されるすべての新車は、E10への対応が義務付けられている。
しかしながら、2002年以前に登録されたクルマでは、問題が報告されているため、E10を使用しないように勧告されている。AUTOCARの姉妹誌What Car?の調査によると、E10は現在のE5よりも燃費が悪くなる可能性があり、小排気量車ではさらに悪化すると見られている。今まで以上に頻繁に給油することになり、低燃費が魅力の1つであったコンパクトカーを所有するメリットが減ってしまう。
E10非対応の車両への影響
冬の心配
エタノールを多く含むガソリンを使用すると、冷えた状態からエンジンをかけるのが難しくなる。
ベーパーロック
エタノールは揮発性が高いため、使用温度が高くなるとベーパーロック(ガソリンが蒸発して気体になること)が発生しやすく、エンストの原因となる。
燃料漏れ
エタノールの持つ溶解性により、燃料システムに使用されるシールやガスケット、およびグラスファイバー樹脂に問題を起こす可能性がある。また、燃料漏れのリスクに加えて、ゴムや樹脂が部分的に溶解して堆積物を生成し、キャブレターのジェットを汚す可能性がある。
腐食
エタノールは酸性になり、アルミニウム、亜鉛、亜鉛メッキ材、鉛やスズでコーティングされた真ちゅう、銅、鋼鉄を腐食させる可能性がある。
2022年のF1燃料
2022年シーズンのF1パワーユニット規定として、新たに「E10燃料」が導入。2021年シーズンはバイオエタノール5.75%混合燃料が使われていた。なお、将来的には持続可能な燃料「eフューエル」が使われることになっている。
CO2削減可能な化石燃料発電:バイオマス燃料の導入
余談ですが、CO2削減可能な化石燃料発電があるそうです。
以下、JPowerのWebサイトからの引用です。
燃焼によって発生するCO2は同じ電気をつくる場合、石炭は天然ガスと比べると2倍近くになりますが、日本の石炭火力は蒸気タービンの圧力や温度を超々臨界圧(USC※1)という極限まで上昇させる方法で、欧米やアジア諸国に比べ高い発電効率を実現しています。
なるほど。石炭を燃料にする発電のCO2排出量は天然ガスの場合の2倍になるとの記載があります。しかしながら、日本は独自の方法で欧米やアジア諸国に比べ高い発電効率を実現しているとの事。
バイオマス(生物資源)エネルギーである林地残材や下水汚泥を燃料に加工し、石炭と一緒に利用することで、石炭の使用量を減らし、CO2を削減することができます。設備を一括更新し、2020年6月に運転を開始した竹原火力新1号機では、バイオマス燃料の混焼率10%を目指しています。
記載はここまでなので、これ以上は掘り下げられませんが興味深いですね。EV用の電源供給のための発電手段に応じたCO2排出量にも目を配る必要があります。詳しい情報があれば掲載します。